「…雨、か。」
書類整理中、急に身震いがしたと思ったら雨音が聞こえて、雨が降り出したのが分かった。
最近ずっと快晴だったのに珍しいなと思いつつも書類を書き続けていた。
「あら、大変。」
窓の向こうをみた松本があわてたような声を出した。
どうした、と尋ねると、うちの隊員が買い物に行ったのだが傘をもっていかなかったと話した。
この雨だとそのあたりで雨宿りでもしているでしょうけど、と付け加える。
「買い物って、ウチの隊、なんか足りないもんでもあったか?」
「そうじゃないんですよ。実はですね……」
雨はまだ止むようには思えない。
「ああ…どうしよう……」
買い物途中、ポツリと頭に感じた水滴。
気付けばどんどんと増えてきて、あわてて近くの茶屋に入ったときには、水滴はすぐに雨となっていた。
早めにいって早めに帰ろうと思っていたのに、思わぬ足止めをくらってしまった。
昨日まではずっと快晴だったじゃん!そんな風に理不尽な怒りを空にぶつけつつも、すぐに気持ちはしぼんでいく。
雨の日っていうのは、大抵の人が憂鬱に感じるものだ。
「すぐやむ…よね?」
少し不安になりながらも持っていた少しのお金でお茶を頼み、通された奥の部屋に座った。
奥の部屋は窓はあるものの、雨のせいで気温が下がって窓が曇り、外がよくみえない。
少し冷えた身体に、注文したお茶はとてもあったかく胸の中心からその暖かさがしみていく。
しばらくぼうっと曇った窓を見ながら、ため息をついた。
今日が仕事の書類が少ない日でよかった。もしも多い日なら私一人いないだけで大騒ぎだ。
っていうか日番谷隊長に怒られる。
いや、まてよ。
たとえ仕事が少ない日でも、雨が降ったぐらいであんまりにもゆっくり雨宿りしすぎても
『遅い!!』と怒られるんじゃないだろうか。
いやそんな。サボってるわけじゃないんだから。大丈夫、大丈夫。
うんうんと頷きながらも、その考えはいつまでも頭にこびりついたまま。
「……ちょっと、濡れちゃったなぁ。」
明日は現世では勤労感謝の日というのがあるらしい。
たまたま現世任務のときに知った私は隊長の為に、結構な値段のするお茶っ葉を買ったのだ。
「大丈夫かなぁ。…かなり高かったからなぁ。」
この雨のなか、どれだけ瞬歩を使ったとしてもやっぱり雨には濡れてしまう。
少し濡れてしまった茶っ葉の袋は、多分もうあとちょっと濡れただけでも中にしみてしまうだろう。
そうすればこの高いプレゼントは台無しの上に、隊長から何をしていたと言われても答えるに答えれない。
「そうだ!松本副隊長に傘をもってきてもらおう!」
伝令神機を取り出し、大急ぎで電話をした。
突然鳴った伝令神機に乱菊は慌てながらもスグに耳へと押し当てる。
相手がだと分かると少し心配そうに声を出した。
「、アンタ、雨大丈夫だった〜? プレゼント濡れてたりしてない?」
『はい! 大丈夫です! …多分。』
「なんか不安ねぇ…」
『だ、大丈夫です!! そんなことよりもですね。その…雨が止む様子がなくって…傘をもってきてほしいんですけれど…』
お暇であれば、なんですが。消極的にが言うのを乱菊はいいわよと返す。
嬉しそうにありがとうございます!と礼をいうに「私が行くんじゃないのよぉ」とけたけた笑った。
意味が分からずは、では誰がくるのかと考えてはみるが誰も思いつかない。
やぁねぇとぼけて、と乱菊がふきだし、また笑い出したのでますます分からない。
「ま、すぐ分かるわよ。どうせ近くの茶屋にでも雨宿りしてるんでしょ?」
『ええ…そうですけど…』
「窓の外でもみときなさい。…あんたのことが好きだって人が迎えにいくらしいから。」
『へっ…えええ!?そ、そんなっ!!だ、誰ですかぁ!?』
「だからー。すぐに分かるっていったでしょ。もうじきつくと思うわ。それじゃあねぇ。」
乱菊は一方的に伝令神機の通話終了をし、仕事をしていなくてもうるさくいわれないことをいいことに、今のうちねと呟いてその場で眠りだした。
「窓の外を見ろって…曇ってて霞んでて…よくわかんないし…」
窓を見るとまたぞくりと寒気が襲う。
先ほどより雨足が強くなったような気がした。
ふとこの茶屋に向かうひとつの傘、白い羽織をきた人間がうっすらと見えた気がした。
あんな羽織をきていて、いまこの茶屋に向かう理由がある隊長の誰かだなんて。
誰かなんて、選択肢なんか無い。一人しかいないからだ。
「う…うそ。まさか。まさか。」
からからから、と静かに開く茶屋の玄関扉。
「迎えにきたぞ。…。」
白い羽織に、厳しいけれど優しい彼が。
霞んだ窓の外-雨の日に10のお題・1-
終