どしゃ降り-雨の日に10お題・8-
「はぁ……」
小さなため息がひとつ、彼女の口から零れた。
誰も居ない執務室に一人で居るのは。
今は昼休み中である。
本来ならば外に出て日光浴をするのだが、今日はそうもいかなかった。
窓へと視線を移せば、灰色の雲が空全体を覆い雨を降らせている。
数時間前ならばさほど強くなかったが、急にバケツをひっくり返したような雨になったのだ。
確かにここ最近は晴ればれとした天気が続きポカポカして暖かく、仕事中でもうたた寝をしてしまいそうになる程だった。
しかし今日は雨。
は自分の上司の椅子に座り、窓の柵へ両腕を乗せその上に顎を載せた。
窓の向こうの景色をただボーっと見つめる。
「何してんだ、」
いきなり背後から声が聞こえた。
誰だろう、と考えなくてもわかる。
今彼女が座っている椅子が彼のいつもの場所。
そう……声の主は上司の日番谷だった。
だがは驚く事もなく、かと言って振り返る事もせず、ただ窓の外を見つめる。
日番谷に返事をする時でさえ、視線は窓の外。
「外、見てるんです」
「…………」
ピクリ、と…彼のこめかみが動いた。
「おい、」
「はい、なんでしょうか」
「今は休憩時間だぞ」
日番谷の言葉の意を読む事に時間がかかったのか、返事が返ってきたのは数秒後だった。
「そうだね…」
敬語をやめたに対し日番谷は頭をガシガシと掻き、いつものように袖の中に手を入れた形で腕組みをする。
そんな彼は外をずっと見続ける彼女の後ろ姿を見つめ思いにふけた。
―――外見て何が面白ぇんだ
どしゃ降りに雨が降る日はいつもこう。
仕事中は別だが、休憩時間になると窓の外を見つめてその場所から動こうとしない。
彼女の癖なのか、それはわからない。
だが日番谷から見て、外を見つめるは寂しそうな、悲しそうな瞳をしているのは確かなのだ。
「んな顔……すんなよ」
細く、小さく、微かに呟いた日番谷。
だが外を見ている彼女には聞こえていない。
隣に立っている友達より雨の方に意識を向けていて…。
――俺を見ろ、……
日番谷はずっと彼女を想ってきた。
その悲しげな瞳に、漆黒な瞳に、自分を写してほしくて。
だけどそんな気持ちを伝えられなくて、いつも彼女を想うだけ。
――雨が止む…その時に…
雨上がり、その瞳に写るのはきっと……――――
(言うんだ、この気持ちを…後悔はしたくねぇから)